<シダンゴ山>
これは、山の名前である。
神奈川県の丹沢山系の地図を見ていると、
このへんてこな名の山が記されてあった。
「そら、登らにゃならんじゃろ」
登山の動機は、たわいもない。
東名高速の大井松田インターを下りて、20分。
<奇> という集落があった。
ここにあるバス停が、登山口となる。
今、この地名を何と読みました?
(き)・・?(より)・・?
<やどりき> と読むのだ。
さて、シダンゴ山、標高758m。
美しい茶畑を見ながら、えっちらやっちら登る。
途中、鹿避けのフェンスが張ってあり、ドアを開けて、中に入る。
つまり、登山者は、鹿の生息領域を進むのである。
「ほお、シカに会えるのかな・・」
と、呟いている間もなく、
クエ~~~ン!
人間の叫び声に似た、鹿の鳴き声だ。
ガサッ
林の中に、おケツの白い鹿の姿が。
(あれは、バンビか・・)
杉の植林の中をズンズン登っていく事、1時間余り。
一気に森がひらけ、頂上に辿り着くや、空が青く澄み渡る。
澄み渡るハズだった。
日頃の行いの良さを裏切り、空は曇っていた。
案内所にコレが眺められると書いてある、
富士山だの、相模湾だの、伊豆大島だの、
360度の絶景は望めなかった。
そして、登っている最中ずっと、気になって仕方がなかった問題。
<シダンゴ>って何?
4つのダンゴってこたあ、ないよネ。
なぜ、この山だけ、
カタカナなの?
すると、その疑問を、登山者皆が持つらしく、
では、お答えしようと、石碑に刻まれた説明書きがあった。
なんでもその昔、欽明の時代というから、
え~と飛鳥時代になるのだろうか・・
(今、時代を懸命に探した)
この山に仙人が住んでおったのじゃそうな。
その方の名前が、
<
シダゴン>
だったそうな。
その名前が、
転じて、シダンゴになったんだそうな。
ちょ、ちょっと待てええ~
なんだよ、シダゴンってえ?
ウルトラマンに出てくる怪獣かあ?
志田さんて人がいて、愛らしく志田ゴンって呼んだのかあ?
それに、
ゴンが
ンゴに、簡単に
転じていいのかあ?
けん
じろうが、転じて、けん
ろうじには簡単にならないぞぉ。
日頃の行いの良さが裏切られ、
絶景が見られないうっぷんを、石碑に向かって呟く、
けんろうじ君であった。