
今日は、人間の思い込みとは、いかに激しいものかと云うお話だ。
先日、丹沢の山に登ろうと、登山口に辿り着いたところ、
面白い橋があった。
<メロディ橋>
案内書によると、
この橋の欄干を叩くと、メロディが流れると云う。
どういう事だろう?
更に、案内書には、そのメロディは、
《お馬の親子》 だと書いてある。
「♪~おうまの親子は仲良しこよし、
いつでも一緒にポックリポックリ歩く~♪」
ふむ・・欄干を叩く・・か。
よし、叩いてみよう。
欄干はアルミ系の金属で出来ている。
お馬の親子の歌を歌いながら、橋を渡る。
右手で、同時に欄干を叩いた。
♪~ゴンゴンコン~コゴンゴンゴン~♪~
おお!、見事だ、お馬の親子の曲が欄干の金属から、
メロディとなって聞こえるではないか!
へえ~よし、もう一回やってみよう。
♪~ゴンゴンゴン~
ん・・?
欄干の途中に何かあるぞ。
欄干の縦にハスかっている金属の棒と棒の間に、
鉄琴のようなものが、括り付けられている。
ズラっと、いくつも括り付けられて並んでいる。
そして、最初の鉄琴の横に、
スリコギほどの木の棒が置かれてある。
つまり、この棒で、鉄琴を叩け・・?
ひょ、ひょっとして、これが、メロディ橋?
順番に叩いてみた。
♪~コンキンキン~~~♪
完璧な、<お馬の親子>が、川面に響き渡った。
ん~っとするとだねぇ~
さっきのメロディは何だったの?
戻って、もう一回欄干を叩いてみる。
ゴンゴンゴン、ゴンゴンゴン、ゴンゴン~
全く音階のない、ゴンゴンが鳴り響くだけである。
金属音のするモクギョと変わりない。
しかし、さっきは、はっきりとメロディに聞こえたのに、
どういうこと?
つまりは、
人間の思い込みとは、かくも錯覚を呼び起こすという
典型例が、そこにあったのだ。
自分に都合よく、音階を作り出してしまったのだ。
山からの帰り道、再びその橋を渡った。
試しに欄干を叩いてみた。
ゴンゴンゴン~
モクギョの音が、静かな山間にコダマしていた。