
テニスをやった経験があるだろうか?
私は、テニスは好きなのだが、
アレが嫌いなのだ。
アレとは・・・
《
ネットにボールが引っ掛かる》
引っ掛かるたびに、歩いて取りに行かなければならない。
ネットまでの数歩が、憎い。
かがんで拾って又戻る。
この無駄な行為に、難癖をつけたい。
自動的に、ボールが回収されるシステムが
出来ないだろうか?
ネットが強震動して、ハジキ返すとか・・
ネットの下に傾斜になった溝があって、
ゴロゴロと回収されるとか・・
テニスという競技を作ったイニシエの方の、
最大のミスだったと断言したい。
伊達公子は、
今まで、何万球のボールをネットに引っ掛けただろうか?
杉山愛は、
何十万球のボールをネットまで、拾いに行っただろうか?
そして、なぜか、ここに役者<酒井敏也>が登場する。
今や、頭髪も薄くなり、年齢も50と言えば、50だし、
25と言えば、25でも通じる、
とっちゃん坊や顔した役者である。
その酒井敏也と、以前テニスに興じた事があった。
運動神経の良いイシマルと、
運動神経が
全くない酒井とのラリーである。
ラリーと言ったが、
こちらからボールをコートの向こうに打っても、
あちらからは決して帰ってこない。
ラケットに当たる音さえ聞こえない。
人が見ていたら、イシマルが打つ球を、
酒井が、ひたすら回収しているように見えただろう。
テニスと云うより、野球である。
それでも、一応二人は、シングルの試合をしているつもりだった。
その酒井でも、試合なのだから
サーブを打たなくてはならない。
パスはない。
酒井がサーブを打つと、お決まりのように、ネットに引っ掛かる。
何度打っても引っ掛かる。
そのたびに、ネットまでボールを拾いにゆく。
そうこうして、テニスの試合形式の練習が過ぎていった。
「あれっ、酒井はどこに行ったんだろう?」
酒井の姿が見えなくなった。
やがて、しばらくぶりに、酒井が現れた。
その姿を見て、目がまん丸くなった。
半ズボンの白いパンツが、
異様に膨らんでいる。
見ていると、そのポケットから、
サーブの度に出てくるわ出てくるわ、
ボールを大量に詰め込んでいたのである。
ネットまで拾いに行くのが、イヤになり、テニスボールを
ギュウギュウに、ポケットに詰め込んでいるのだ。
イシマルより、ボールを拾いに行くのが大嫌いな人間が、
ここにいた。
酒井敏也の
ボール貯金である。