困ったなあ、君の事はもう書きたくなかったのに、
再び登場させるはめになってしまった。
君の名は、<ナカヒラ君>だ。
自称、<釣り天才>のナカヒラ君だ。
<天才釣り>ではなく、<釣り天才>との表記が、
はっきりナカヒラ君を表現している。
昨日も、東京湾で、船長の私に連れられ、
釣り糸を垂れていた。
ターゲットは、<鯛>だ。
釣り場に着くや否や、君は船酔した。
餌を針に付け、海に放り込むや、うっぷした。
ゲップ・・
かたや、イシマル君は元気だ。
竿を振りまわし、船の中を走り回り、
鯛釣りのレクチャーを、
聞く耳のないナカヒラ君に吹き込んでいた。
一時間経過・・
当然の如く、ナカヒラ君が、船べりに凭れかかり、
トグロを吐いた。
船酔いの限界だ。
問題は、その後だ。
「おお~釣れてる!」
ゲロゲロになりながら、ナカヒラ君は、竿を持ち上げる。
やがて、海面にユラリと姿を現したのは、
2キロを優に超える見事な鯛だ。
ガ~~ン!
さあ、ここで、検証しよう。
ありとあらゆる技術を駆使して釣りに挑むイシマルだ。
一年間、雑誌とテレビとで研究に研究を重ねて、
鯛釣りに挑むイシマルだ。
釣り新聞まで購入して、没頭しているイシマルだ。
かたや、道具も持っていないナカヒラ君だ。
一年間、な~んも考えずに、
たまたま鯛釣りに出かけるナカヒラ君だ。
その二人が対決すると、
毎回ナカヒラ君に、大きな鯛が、数匹釣れるのである。
毎回イシマル君は、一匹も釣れないのである。
この不可思議な確率が、何回も続いているのである。
し、しかもだよ!
奴は、餌の交換をする事もなく、
ただただ、眠っているだけなんだゼ!
ひょっとすると、魚は気付いているのだろうか?
<
釣り人の殺意>を・・