ラム(ヒツジ肉)好きにとって、その最上級は、
<骨付きラム>である。
アバラ骨が、8~10本ほど付いたブロックで買って来る。
塊りにニンニクをすり込み、塩コショウをしておく。
七輪で炭火を起こし、火がガンガンになったところで、
近火にして、骨付きブロックを置く。
まずは、表面をカリカリに焼くのだ。
両面に焦げ目が付いたところで、
アミをかさ上げし、
遠火にする。
いわゆる、
強火の遠火である。
遠赤外線だかなんだかが、効率よく働く距離に、置いて待つ。
ただただ待つ。
待つ事十数分。
甘ったるい鼻孔をくすぐる香りが、漏れて来た。
よし、切ろう!
包丁を、骨と骨の間に差し込み、一本づつ裁断する。
おお~!
見よ! ピンク色したラム肉が、肉汁をため込んで、
涎を誘っているではないか!
付けるものはナシ!
骨を手で掴んで、そのまま、かぶり付く!
かぶり付く!
脳天に何かが突きぬけてゆく・・
しばし、噛むのも忘れ、ボ~としている。
ウツロな目が、目の前の齧りとられた骨の肉片を、泳いでいる。
「もう駄目だ・・」
なにが駄目なのかわからないが、ついそんな言葉が漏れてしまう。
「もう一本!」
「もう一本!」
あちこちから、手が伸び、骨つきラム肉は、
駄目なハイエナ達によって、夜のしじまに消えてゆく。