一番右 背負子(しょいこ)
私が山に登る姿を見て、変だと云う人がいる。
担いでいるリュックが、変だと云う人がいる。
その意見は正しい。
私が担いでいるのは、正確に云えば、<リュック>ではない。
<背負子(
しょいこ)>である。
その昔、キコリやマタギが背負っていたアレだ。
リュックと背負子はどう違うのか?
積める荷物の量が違う。
リュックは最大積載量を<リットル>で表わしているが、
背負子にはそれがない。
街を走るトラックの後部に、
時折こんなジョークステッカーを見かける。
《最大積載量 積めるだけ》
まさに背負子の積載量を表わしている。
30キロ、40キロ・・
なかには、60キロ以上も積んでしまう猛者もいる。
最近は、山を登っていても、背負子を担ぐ人に出会う事はない。
いわゆる、背負子は、オールドスタイルなのだ。
昔風なのだ。
山小屋に行っても、荷物を降ろした途端、
奇異の目で見られる。
「懐かしいですなあ~見せてくださらんか」
還暦を越えた方々に囲まれる。
「懐かしい」と言われたワリには、見た事がないらしく、
感想は、ほとんどが、
「ほお・・・はあ・・」
私にとっては、この背負子は、
オールドスタイルでもなんでもなく、
現役なのである。
私の中の、オールドスタイルは、
《キスリング》である。
40年以上前の登山といえば、世界中、
キスリングが主流だった。
現代のリュックが、縦に長いのに対して、
キスリングは横に長かった。
それゆえ、重みが肩にのしかかり、登山家を苦しめたのである。
後ろからの見た目がカニに似ていたので、
<カニ歩き>などと呼ばれた。
30キロのキスリングを背負って、
谷川だけを目指す19才のけんじろう君