猿手(さるで)である。
<猿手>
ヒジ関節が、直線より、外側に曲がる腕だ。
はい、両手を前に伸ばして、手のひらを合わせてみよう。
グッと力を入れてみよう。
ヒジがくっ付きましたか?
付いたなら、アナタは猿手である。
全くくっ付かないと云う方は、何でもない手である。
ヒジが付いた挙句に、手のひらが離れたと云う方は、
相当
激しい猿手である。
小学校の頃、先生がのたまう。
「解った人、手を挙げて!」
『はい!』
いっせいに手が挙がる。
「手を曲げないで、シャンと
伸ばして!」
先生は教育する。
するとだ、ヒジの所から、
折れた様に
外側に曲がっている友人がいる。
「真っ直ぐ、挙げなさい!」
先生の叱咤がとぶ。
すると友人は、もっと伸ばそうと、力を入れる。
当然、もっと曲がる。
なんせ、
激しい猿手なのだから・・
猿手は、格闘技において、有利である。
関節技が掛かりにくい。
腕ひしぎ十字固めが決まったと思っても、
まだヒジには余裕があるのである。
大人になって、猿手を見つけるのが難しい。
まず、挙手をする機会がない。
あったとしても、真っ直ぐに挙げない。
アメリカの法廷における、聖書の上に手を置いて、
宣誓をする時のような、挙手になる。
あれほど、小学校の先生に教育されたのに、
なんの役にたってない。
教育は、難しい。
しかし、見つける方法はある。
半そでを着ている夏場にしよう。
賞品争奪戦のジャンケン大会がいい。
一人と、全員でやるジャンケンだ。
「私に勝った人だけ、残って下さい!」
「ジャ~ンケン!ポン!」
『勝った、勝った!』
腕を思いっきり差出しながら、前に歩いてくる。
誰よりも高く突き出しているその腕が、
妙な方向に曲がっている輩がいる。
見ぃ~つけた!
久々に、猿手を見つけられた恥ずかしさに、
輩は、ヒジを曲げる。
残念なことに、曲げた状態で、普通の真っ直ぐだ。
「さあ、もう一回いくよオ~
ジャ~ンケン、ポン!」
『勝った、勝った!』
又、猿手の彼が、ヒジをあらぬ方向に折り曲げて、
前進してくる。
はっと気付いて、彼にとっての、
曲げたにする。
彼は、ヒジがあらぬ方角に曲がっている形が、
恥ずかしいのではない。
名前がイヤなのだ。
猿の手と呼ばれるのが、気持ち悪いのだ。
進化の途中を見られた様な気がするのである。
ところで、猿は本当に、猿手なのだろうか?
どうやって、確かめたらいいのだろう?
宿題が増えたナ・・・
格闘家 角田氏