最終日。
ウインドグルの予想では風速20mを超えると出ている。
早朝、ポンポンビーチに辿り着いた私達の顔面に、
18mを超える風が吹き荒れていた。
リグとボード合わせて50キロの荷物を、
風上に運ばなくてはならない。
ナカヒラ、滝田、イシマルの3人が、強風の中、
ベースキャンプをあとにし、
砂漠に足をとられながら台車を押してゆく。
500m風上に前進基地を築く。
その頃に、風速は、
20mに達した。
風速が、アベレージで20mを超えると、
人は、その場で正常な営みが出来なくなる。
立ったりしゃがんだりの単純行為にさえ苦労する。
パシパシパシッ!
珊瑚の砂が、飛沫となって、飛んできて当たる。
全員、アイマスクを嵌める。
「痛テテテ~!」
大騒ぎしているナカヒラ君。
頭部に有るべき保護物質密度が低いため、
珊瑚の砂の猛攻に苦しめられている。
「痛い!」
全員、タオルで頭部と顔面を防御する。
「4,1と4,6を張ろう」
私の呼びかけに、セッティングにかかる。
普段1人で張るセールが、3人がかりでないと張れない。
完全な吹きっさらしでの20mの中、
スラロームセールを張るのは、至難の業だ。
大声で叫んでも、何も聞こえない。
耳の横では、風がボーボーうなっているだけだ。
たまりかね、風速計を風にあてた。
<
23m>(47ノット)
17m以上が、台風と言われる風速で、
23mを記録している。
チラっと海面に目をやると、爆裂している。
この海面に、4,1もしくは、4,6で出艇し、
40度の角度で下らなくてはならない。
え~とネ・・ウエ~ブで言うと、2,8か3,0かなあ~
しかも、ウエーブボードではなく、
究極のスピード用ボードなのだ。
幅が、
42センチしかない!
ナカヒラ君と滝田君が、リグと10キロの重りを背負って、
風上に歩いてくれる。
その距離、1キロメートル!
20mを超える風の中、珊瑚の砂浜を風上に1km!
やったことあるウインドサーファーなら、
この過酷さはわかるネ。
いよいよ、爆風にエントリーだ。
問題は、クソオーバーのセールに、極小ボードで、
ウオータースタート出来るかの、闘いだ。
普段の風で例えてみよう。
「6,0オーバーだよ!」
そんな状況だと仮定しよう。
アナタは、無理やりこんなリグで出られるかな?
9,0セールで、75ℓのボード。
ウオーターして、アビーム無しで、
いきなり下りで走れと云うテーマだ。
しかも、フィンが、
22センチ!
さあ、アナタならどうする?