
「集合!」
又、イシマル探検隊に号令がかかった。
ここんとこ、私の周りの人々は、集合号令で忙しい。
今回の目的地は、丹沢の山である。
<塔ノ岳(とうのたけ)> 1491m
雪中登山に向かったのは、隊長含めた4名の隊員だ。
早朝、出かけたたのは良かったが、車は、
ヤビツ峠の遥か下の地点で、
路面凍結のため、停車せざるを得なかった。
「ええい、ままよ、ここから歩こう!」
本来の登山口まで、コンクリーの道路を1時間半歩く。

「おっ、鹿じゃないか!見て見て!」
滝田くんが、喜びの声をあげる。
3頭の鹿が、草を食んでいる。
滝田くんは、昨今の山の中の現状を知らなかった。
それを後々、知らされる事になる。

標高700mからすでに、雪景色だ。
アイゼンを装着し、確実に高度を上げてゆく。
「超、調子いいでしょ!」
アイゼン初心者の滝田くんに、ナカヒラくんが、
アイゼン先輩として、アドバイスを送っている。
「うわっ、鹿がすぐそこに!」



ルート道の脇、数mのところで、
鹿4匹、草をムシャムシャやっている。
目が合っても、逃げる気配がない。
最近、日本の山で、鹿の害が叫ばれて久しい。
大量の鹿が繁殖してしまい。
若木を皆、食ってしまうのだ。
その鹿が、人間を見ても、逃げない。
いや、逃げてくれないのだ。
カメラを向けると、愛くるしい目つきで、
じ~とポーズを取ってくれる。
写真を撮るには、実に楽チンなのだが、
こ・・これでいいのだろうか?
まるで、動物園の鹿じゃないか。
人間の怖さを知らしめるべく、
大声で威嚇しといた方がいいのだろうか?
もし、我々が、
鉄砲を持った猟師だったら、
君たちは、とっくにお陀仏なのだぞ!
鹿鍋なのだぞ。
鹿刺しとかにもなっちゃうんだぞ。
山梨に送られて、
鹿カレーにされちゃうぞ。
よし、今回は許してやる。
今度出会ったら、許さんけんネ。
っと、歩き始めたら、

「し、死んでる・・」
道の上で、鹿が死んでいた。
ふ~む、こんなに簡単に、
鹿の生態の勉強が出来ていいのだろうか?
そのうち、道端で、
出産シーンとか見られるのだろうか?
「おっ、こっちには、角の生えた雄がいるゾ」

しばし、進む・・
「おっ、随分立派な角を生やしたヤツもいるゾ」
しかも、山小屋のすぐ脇じゃないか!
エサでも貰いに来たんかい?
鹿を見たくなったら、奈良に行かなくとも、
山にちょいと入れば、すぐに見られます。

滝田くん、危ないってば