ネーヤンの名調子は続く。
「この大島では、
みかげ石がたくさん獲れており、
墓石や、化粧石など、皆さまのお宅で使われております」
採石場には、みかげ石で作られた卓球台もあった。
石を眺めながら、ペダルをこぐ足に力が入る。
やがて、最後の橋が見えてきた。
そのたもとで、車で先行したタメトウさんと落ち合う予定だ。
「わしゃ、復活するでのう」
なんと、タメトウさんが、オケツの痛みを乗り越え、
最後の難コースに挑戦すると言う。
「オケツはどうするんですか?」
『秘策を用意した』
見ると、自転車のサドルに、何かを縛り付けている。
「低反発クッションを買ってきたんじゃぁ~」
島にあるホームセンターで、低反発座布団を買い求めたのだ。
780円。
しまなみ海道に賭けるタメトウ魂は、強かった。
『行くでえ~!』
ところが・・・
ギャンギャン漕ぎだした我らは、この後、
自然の猛威にさらされる。
「寒い!」
「進まん!」
四国に辿り着く最後の橋は、長大なブリッジであった。
しかも、悪いことに、天候は風雲急を告げ、
雨が降り出し、
強風が吹き付けてきた。
正面から吹き付ける雨まじりの風は凄まじかった。
こいでもこいでも、前に進まない。
さすがのネーヤンから、
流暢な観光案内スピーチが聞こえてこない。
そんな時だった。
タメトウさんの、広島弁の大きな声が響く。
「ああ~楽しいなあ~来て良かったなあ~
きつい時は、いつか過ぎるケンなあ~」
我らは、漕ぎ続けた。
タメトウさんの言う通りだ。
きつい時は、いつか過ぎた。
そして、空は晴れ渡り、見事な景色を見せてくれたのであった。
今治到着 77キロ走破