隠岐の港を歩いていた。
小船が何艘も綱がれていた。
その船底の影を覗くと、アララ・・
小鯵が、大群で群れている。
その数、数千匹!
スワッ!
釣具屋に走った。
「港でアジ釣りたいんですが!」
『コレとコレとコレ持ってケ、500円』
大きなバケツまで持たせてくれた。
大きなバケツの意味は、そのうち解かる。
コマセ篭に、オキアミを要れ、針には疑似餌だ。
そっと水中に放り込む。
パラパラと撒かれる撒き餌の周りを、
アジの大群がグルグル回りだす。
やがて・・
一匹が飛び掛ると、パニックに陥ったかの如く、
我も我もと、エサに飛びつく。
そのうちの何匹かが、針に喰らいつく。
グイィィ~ン
サオがしなり、銀色に輝くアジが釣れあがる。
小アジといっても、15~23センチまで様々。
投入するたびに、釣れ続く。
入れ食いってぇやつだ。
「うめえなあ~」
振り返ると、小学生が数人ヒザを抱えて見学している。
『おまえら、釣らんのか?』
「うん、いっつも釣ってるケェ」
野球の試合が終わって、本土から帰ってきたばかりだと云う。
『勝ったんか?』
「いんや、負けた」
『そっか、ま、いいやの』
「そんげ、釣って食えるんか?」
『食う、俺が捌いて食う』
「ふ~ん」
『そうや、アジいるか?持ってくか?』
「いんや、いらん。自分で釣る」
彼らに言わせると、
小っちゃいアジは、釣ってもしょうがないから、
成魚のカサゴやメバルなどを釣るのだそうだ。
で、大人は、大きな鯛やヒラメを狙うのだそうだ。
ちなみに3年前、
この浜で、岸から釣り糸を投げて、
106センチのヒラメがあがった。
岸から釣ったヒラメの日本記録だそうだ。
この記録を超えた人には、
30万円の賞金が懸かっているってサ。
エサは、この生きた小アジだってサ。
夜、私はヒラメの気分になってアジを味わった。