
コレ何だかわかる?
笹である。
電柱を支える鉄線を覆う筒の中から、伸びている。
身長は、2mほどに伸びた笹だ。
周りを見回してみる。
笹は生えていない。
いや、よくよく見ると、生えていたのだが、
市の職員によって、徹底的に刈られた様子がうかがえる。
つまり、彼は、たったひとり生き残った笹なのだ。
生まれた時は、不遇だった。
広大な斜面の中で、偶然に、
直径10センチに満たない暗闇の中で芽を出した。
(ん・・ここはどこだろう?)
上空を見上げると、ほんの少しだけ、灯りが見える。
(これが、世の中なのか・・)
他の世界を知らない彼は、賢明にその灯りを目指した。
地面から栄養だけは、どんどんやってくる。
来る日も来る日も天空を目指した。
直径10センチの世界は、息苦しかった。
幸い強風におびやかされる恐れはなかったものの、
孤独だった。
そして、ある日・・
空の中に頭をのぞかせた。
(ひろい!)
驚いた。
自分がどんな世界にいたのか、初めて知った。
さらには、自分だけが生き残った事実に、孤独感がつのった。
(よし、頑張って生きよう!)
彼には、いいことに、地下茎という子孫繁栄の手が残っている。
(自分がやらねば誰がやる!)
彼は、今、賢明に生きている真っ只中なのである。