
目が覚めたら、真っ暗だった。
生まれたボクは、
笹である。
上を見上げると、遥か上空に、空が見える。
とてつもなく長い縦穴の底に、ボクはいる。
(同じ境遇の仲間がいることは、後で知った)
笹のボクは元気だ。
力強い先祖のエネルギーを持っているらしい。
明かりに向かって、わが身がグングン伸びるのがわかる。
仲間がいるのもわかる。
兄弟親戚が一緒に伸びているのがわかる。
ただし、窮屈だ。
直径20センチほどの世界が、空に向かって伸びている。
そして、ある日、ボクらは空に出た。
空は・・・広かった。
周りを眺めて、驚いた。
「ボクらだけしかいない・・」
仲間や、親戚は、みんな刈り取られていた。
ボクらの耳に、その時、コトワザが響いた。
《井の中のカワズ》
眼がひらけた。
と同時に、勇気が湧いた。
生きよう。
単独でも生きよう。
少数になってしまったが、だからなんだ!
このエネルギーを試してみよう!
だから、言っとく・・
頼むから、ボクを刈らないでネ。

同じ境遇の仲間は・・
《孤独な笹》 2012;3月30日参照