~昨日のつづき~
「船でま~す!」
船頭さんの高らかな声と共に、
鵜飼舟は、木曽川の川岸を離れた。
太陽はすでに沈み、すっかり夜のとばりが、辺りを包んでいる。
数隻の遊覧船(我らの船)が、川面を走る。
小さなエンジンで、静かに走る。
遊覧船は、どこかに向かっている。
どかかと云うと、鵜飼舟に、辿り着こうとしているのだ。
鵜飼舟は、別にいるのだ。
はるか遠くで、かがり火を焚いた鵜飼舟が、ゆらりと動き出す。
鵜飼舟は、かがり火の灯りだけで、ゆるゆると動いていく。
当然、鵜匠が、10本ほどのヒモで鵜を操り、
アユを捕らまえてゆく。
観光船は、その舟を、追いかけるのだ。
言葉を変えると、我らは、鵜飼舟に、
まとわりつくのだ。
鵜の捕食シーンを見る為に、ま
とわりつくのだ。
一隻の鵜飼舟に、数隻が
まとわりつく。
まとわりつく船の方が、明らかに大きい。
しかも数隻だ。
一隻に、数十名が乗っている。
もの凄い数の目ん玉が、
鵜の目タカの目で見つめている。
「わ~食った食った!」
「ほら、食った!」
「みてみて、吐かせてるぅ~!」
興奮しっぱなしの観客から奇声が挙がる。
っと、その時、鵜飼舟から、アナウンスが流れ始めた。
腰蓑をまとった鵜匠が、解説を初めてくれた。
「この鵜は、海鵜でございます~~」
うみう?
なんと、川でアユを獲っている鵜が、
実は、海育ちの鵜だと云うのだ。
川鵜より、海鵜の方が、体格も大きく、強いという。
なんでも海鵜は、渡り鳥であり、そいつを捕まえてきて、
3年教育してから、やっとお披露目するんだそうだ。
ひえ~~
塩分問題とか、どうなっているのだろう?
さらに、解説は続く・・
「鵜は、アユ以外の魚も呑みこんでまいります。
困るのは、ウナギでございます。ウナギを呑むと、
ウナギも必死で、外に逃れようといたします。
それを再び鵜が呑みます。
又、逃れます。
鵜がとても難儀いたします。
うが、
なん
ぎいたします。
うがなんぎ・・
うなんぎ・・
うなぎ・・
ウナギの語源になったとされております」
ほ~んとっかなぁ~?
鵜飼舟は、緩やかに流れてゆく・・