
博多駅から大分駅まで、
<ソニック>という特急列車が走っている。
ソニックが、最後の駅、別府を過ぎ、海が見えてくると、
車内アナウンスが突然、イシマルの声に変わる。
音楽と共に、旅のお供のナレーションが流れるのだ。
のだと言ったが、実際ソニックに乗って聞いた事がなかった。
先日、ついにその機会がやってきた。
別府を過ぎたところで、私なりにそわそわしだした。
その日は、車内が満席だった。
旅行者であふれていた。
やがて、音楽と共に、聞き覚えのあるナレーションが始まった。
「わたくし、古里を大分に持つ、
いしまるけんじろうでございます。
別府を過ぎ、海が見え始めると・・・」
ん・・?なんか変だ?
チラリと隣の席のご婦人を見た。
前の席のおじさんにも目をやる。
なぜか・・?
皆、ナレーションに無関心なのだ。
(喋ってるのボク)
右手で自分の顔を指さしそうになるのを、
左手でグッっと押さえながら・・
そっと廻りを見回してみても、誰ひとり、知らん顔である。
え~なんでなんで?
なにがしか反応があるものだと、期待していたのだが、
シ~~ンである。
シ~~ンとしたまま、ナレーションは終わり、
やがて列車は、大分駅にすべりこんだ。
っとここで、事の真相が判明したのである。
車内にいっせいに中国語がとびかった。
なんと、私の乗っていた車両全員が、
中国からの観光客だったのだ。
そりゃあ、アナウンスとナレーションの区別つかんわな。
役者も区別つかんわな。
どうでもいいわな。
真相がわかるまで、
かなり
がっかりしかけたのだった。
ああ、よかったよかった。