真夜中である。
寝室に寝ている。
ふと、目が覚めてしまった。
原因は、蚊のなく音だ。
プぃ~~ン
なるほど、どうやら、寝室に蚊が一匹いるらしい。
(このままでは、眠れない!)
そこで、作戦をたてる。
腕や足を布団からむき出していたのでは、
その蚊をやっつけられない。
そこで、
顔面をオトリに使うのだ。
顔だけ、布団から出し、
「さあ、来い!」と息を吐く。
耳で、蚊のなく音を聞き取り、
顔面のどこかに止ったところを狙って叩くのだ。
プィィィ~~ン
(来た・・)
プィ
(右のホホにとまった)
ここですぐに叩いてはいけない。
それでは逃げられてしまう。
蚊が、わがホホに針を突き刺すまで、待つ。
(すでに、血を吸われているのではないか?)
不安におそわれるが、そこは大人になって、
蚊にも、最後の晩餐くらいさせてやろう。
そこで、やおらそお~と布団から右手を出し、
右顔面めがけて、振る!
バシッ!
っとなるハズだった。
なんたって、さっきまで、ぐっすり眠っていたのだ。
寝ぼけている。
動かせるのは、右手だけという不自然な格好だ。
そんな状態で、正確に、右手の手のひらで、
右ホホの一点を叩けるだろうか?
現実は無理だった。
ガツンッ!
骨と骨がぶつかった。
しかも、殴られた顔には、
逃げ場がなかった。
ボクシングでも、殴られた人のホホは、横に動く。
ところが寝ている私のホホの先は枕でガードされている。
ガツンッ!
そのまま、動かなかった。
脳みそが、頭内で揺れた。
目を開けていれば、
目から火花が飛び出るところが見られたであろう。
自分で自分を、
叩き失敗したのである。
この失敗は誰にも、文句が言えない。
ううぅぅ~~
そういえば、蚊は・・?
プィィ~ン
ってぇ、飛んでるじゃ~~ん!
意味のない自損事故となった。
2022 9