
時は、40年後・・
つまり・・今だ。
18才の時に登った
甲斐駒岳(かいこまがだけ)。
山梨県と長野県の境目に位置する。
その山に、再び登りたいと、18才プラス40才の、私が願った。

今では、甲斐駒岳には、スーパー林道という道を通って、
細く険しい山道を、
バスで2000m地点まで辿り着ける様になっている。

そして、登山口から、標高差1000mをいっきに登る!
この山は、私の中でも特別の山である。
なんせ、山容が男らしい。
中央線の小淵沢辺りから眺めると、
肩を怒らしたコレみよがしの姿は、歌舞伎のミエに似ている。
「なりこまや!」
大向こうから、声がかかりそうである。

さて、この山の醍醐味は、
頂上直下である。
夏でも、雪をかぶったかの様な
白い岩峰に包まれた頂上。
完全なる岩山なのだ。
登るには、岩を避けては通れない。
私の目の前にも、ソレは現れた。
《直登コース》
《巻き道コース》
はい、私はどっちに行ったでしょう?
って、質問するまでもなかったネ。
当然の如く、
直登コースに足を向ける。

いや、手で登り始める。
岩のクライミングだ!
2900mの高地での、クライミングである。
空気薄~~い!
ハアハアハアハア・・
甲斐駒岳に登ると、山の定理がわかる。
《山は、岩で出来ている》
土で出来ているように錯覚しているが、それは間違いだ。
土は表面を薄くおおっているに過ぎない。
木々の落ち葉が、溜まり溜まって土を拵えた。
あの土を雨が流せば、そこには、岩だらけの山が現れる。
岩を掴んで登っていると、山を掴んでいる気分になる。
山は、足だけで登るには勿体ない。
手が参加すると、登山の醍醐味がグンと増す。
猿の状態に戻る方が、味わい深いのである。
出来る事なら、落ちている木の実を拾って食べたくなる。

甲斐駒ケ岳は偉大であった。
その頂上は、わけへだてなく、
登ってきた頑張りやさんを祝福してくれる。
遥かかなたの山々が見渡せる。
ん・・?
今日は、おなかのグルグルが無かったゾ。
40年で、けんじろう君はここまで成長していた。