珍しい将棋の瞬間をお見せしょう。
駒台に、
香車(
きょうしゃ)
が4枚、乗っている。
将棋の駒で、香車は4枚である。
といことは、すべての香車が、駒台にある。
こまだいとは、右下と左上にある取った駒をおく台だ。
これは、プロの対局だ。
将棋を良く知る人なら、驚くに違いない。
金や銀ならいざしらず、全部の香車を取ることの困難さは、
とび抜けている。
しかも、始めた時には、自分が2つ持っている香車が、
いったん敵に渡り、再び自分が、取り返しているのである。
そして何より、その香車をまだ、使わずに、
4枚とも駒台に置いているのである。
勿論、対局者は、香車収集家ではない。
香車マニアでもない。
たまたまそうなっただけだ。
ひょっとすると本人は、対局中、
《4枚集まった》
という異常現象に気付いていないかもしれない。
アマチュアレベルならともかく、プロの対局でも、
こんな現象が起きる。
いやむしろ、
プロだからこそ起きた現象と言い換えたほうがいい。
将棋を知らない方に、解説すると、
香車を4枚集めたからといって、
良い事があるワケではない。
ポーカーのフォーカードにはならない。
ツーペアーもフルハウスもない。
「4枚あるネ」
「ああ、そうだネ」
交わされる会話は、そんなもんだ。
「4枚ある!」
と言って、騒いでいるのは、私だけかもしれない。
だから、アナタが、この写真を誰かに見せて、
「見て見て!香車4枚が駒台に!」
珍しい現象を叫んでも、
返ってくる視線は冷たいかもしれない。
ただし、横丁の縁台で、将棋をうっているご隠居に、
この写真を、そおっと見せてごらん。
ひょっとすると・・
「おお!この写真をワシにゆずってくれんか、
額に入れて床の間に飾るでな!」