
芝居の話をしてみよう。
役者の演劇教室なるものがある。
劇団の養成所であったり、自分らの作った劇団であったり、
そこで、例えば、海外の脚本を舞台にしようと試みる。
すると、どうしても高年齢の役を、
誰かがやらなければならなくなる。
50才以上のおじいちゃん、おばあちゃんである。
芝居をやろうと
集まっているのは、アラ20才である。
高校演劇であれば、アラ16才である。
既存の台本を選べば、間違いなく、一人は、
アラ50才、いや60才が、出演している。
アラ70才さえ、登場する。
その役を誰かが、やらなければならない。
そして、誰かが選ばれる。
誰かとは、その仲間達の中で、
オジサンと呼ばれる老け顔の奴だ。
で、その彼は、必死で、
老けを演じようとする。
腰を曲げ、ヒザを曲げ、ゆっくり喋り、
ゆっくり歩く。
しかし、悲しいかな、所詮、年齢はごまかせない。
若さは、どんなに演じても<しょせん>である。
しょうがねえなあ~
よし、ここで、彼らに
ジジイを演じる秘策を教えよう。
<演劇教室;ジジイ編>
《歯をホジル》
食事をしたら、歯をホジロウ。
口に固形物を入れた、その後に、すぐ爪楊枝でホジロウ。
チッチッチ・・
ホジッタあげく、シィーシィー音を立てよう。
歯ぐきと唇の間に舌を差し込み、
チャッと音を立てるのも、いいかもしれない。
音を立てたくない場合は、舌で、歯ぐきの回りを、
まるで、舌が何かを探しているかの如く、
グルリグルリと撫でまわすのが、高等テクニックだ。
さらに、ジジイ度を増そうとするなら、
歯の隙間からやっと採れた物品を、
クチクチと噛みながら、楽しみながら飲み干すのがいい。
その時、視線を上げて、愉悦の表情を浮かべるべきだ。
テクニックの仕上げは、最後に、
手の平で、口の回りを下から上にすくい揚げ、
二三度クチャクチャ撫でまわしたあと、
ハア~~と息を吐いて、その手の平をジッと眺めて欲しい。
勿論、ここで、ズルイテクニックに走るのもいいかもしれない。
手の平でなでながら、ついでに、小指なんかを、
鼻の穴に忍ばせて、こそっと鼻くそなんぞを、
ホジッテみるのもいいかもしれない。
ただし、
ただホジルのは、若者でも出来る作業だ。
ジジイならば、それなりのテクニックをみせる。
そのテクニックとは・・!
う~む、ここから先は、
あまりにも息苦しく、見苦しいので語れない。