
「今回の戦いで一番印象に残ったのは?」
インタビューアーが、スポーツ選手にマイクを向けている。
大きな戦いを終えた選手が、成田空港に降り立ち、
最初の口を開き始める。
『そうですねぇ~』
ここから、怒涛のインタビューが連日続く。
テレビ、ラジオ、新聞、週刊誌、雑誌、などなどなど・・
延々、何度も同じ内容のインタビューが、続く。
オリンピックしかり、サッカーワールドカップしかり、
人気を獲得した競技には、インタビューが群れる。
その内容が、どんどん報道される。
我々は、ともすれば、同じ回答の選手の言葉を聞く。
だんだん上手くなってゆく受け答えを聞く。
この<上手く>という表現に注目してほしい。
あえて、こう言ってみよう。
《選手のインタビューにおける喋りの責任は、
最初におこなったインタビューアーにある》
最初の質疑により、口を開いた瞬間、
選手は自分の考えを作り出すのである。
自分の考えに初めて気づく選手さえいるだろう。
そして、2度目、3度目と続くインタビューでは、
その考えを確かなものに確立したり、膨らましたり、
補足したりしながら、整理整頓してゆく。
こうして、何十回も喋っているうちに、
上手くなってゆくのである。
もし、最初のインタビューで、良い話が出てこなかったり、
よもやつまづいたりすると、建て直しがきかない。
「初動捜査の失敗だった・・」
三億円事件のの捜査本部でうなっている辣腕警部も、
初めが肝心だと嘆いている。
どの局も、どの社も、最初のインタビューをとろうと、
やっきになっている。
しかし、もし、スポーツ選手を本気で育てようとするならば、
最初のインタビューは、
選手の未来に大きく影響するのではないだろうか。
なぜなら、彼らは、
《
自分の言葉に、最も影響されるアスリート》なのだから。