
「イシマルさん、なかなかのパフォーマンスだったネ」
私に話しかけているのは、
ミサキちゃん、7歳である。
友人のヒロ君の娘さんだ。
ミサキちゃんとは、彼女が生まれた時から親交がある。
常々、ウイットの富んだ発言で、我々を楽しませてくれる。
時には、辛らつな意見も飛び出し、
私を慌てさせる。
4歳の時、サスケの応援に来て・・
「今日のイシマルさんは、まあまあだったネ」
5歳の時、ドラマを見て、
「うまかったんじゃない」
大人顔負けの感想に、つい顔を赤らめてしまう。
そんなミサキちゃんが、昨日・・
「イシマルさんてさ、
お金払ってテレビ出てるんだよネ」
ガ~~ン!
ミサキちゃんは、これまで、
私がテレビに出ているのは、
出たいから、お金をテレビ局に支払って出ている、
と思っていたのだ。
この指摘は盲点だった。
確かに、
出たいから出ている。
指摘は、あながち間違っていない。
そういえば・・・
20代の頃、小劇場に出演するには、持ち出しだった。
《持ち出し》とは、
お金を払っての出演と云う意味である。
出演するには、チケットノルマを課せられる。
1500円チケットを50枚渡され、
ソレを売ろうが売れなかろうが、
その代金は払わなければならない。
勿論、それ以上売ったからといって、自分のギャラにはならない。
一日アルバイトして、2000円の時代だ。
おまけに芝居の稽古で、アルバイトも思うように出来ない。
家賃さえ払えない。
収入がマイナスの時に、さらにマイナスを課せられるのである。
好きでなければ、やってられない。
出たいからお金を払っていたのである。
そして、現在。
ミサキちゃんの意見は、的を射ている。
私が、テレビに出ている姿が、ミサキちゃんの目には、
(あ~この人は出たいんだな)
と映ったとみえる。
よし、今度、私が何でナリワイを立てているか訊いてみよう。
こんな答えが返ってきたらどうしよう?
「誰かに食べさせてもらってんじゃないの」