さあ、寝よう!
ベッドルームへむかう。
最近のベッドルームの照明は、枕元のリモコン式が多い。
我が家も、そうだ。
しかし、そのリモコンがどこかへ旅立ち中で、
しかたなく昔ながらの、
入り口スイッチパチン方式を余儀なくされている。
真っ暗な中、ベッドまで、たどり着くのである。
たかが5、6歩であるが、暗闇は危険がいっぱいだ。
心して、歩まねばならない。
ところで、蓄光(ちっこう)というテープを知ってる?
舞台では、暗転(あんてん)になった時、
役者やスタッフが、スラスラと歩けるように、
そこかしこに、光るテープをこっそり貼ってある。
床はもちろん、テーブルだの、椅子だの、ゴミ箱だのに、
黄色や緑の小さなテープを貼っておき、それを目印に、
すばやく歩くのである。
ここで、役者イシマルが登場する。
イシマルは、夜目が利く。
人一倍、暗闇に強い。
泥棒でもないのに、暗い道をスタスタと歩ける。
舞台袖から歩き出し、物にもぶつからずに、
目的の場所まで、サッっと行ける。
ほとんど蓄光のお世話にならない。
うまくすれば、泥棒すら避けて通れるかもしれない。
この能力は、役に立つ。
役に立つが、それで、
芝居がうまくなるかと云えば、
あまり関係ない。
本人が、「よし今日もうまくいったナ」
舞台上で、なにものにもぶつからずに歩けた行為を、
うまくいったナと感慨にふけっているだけである。
昨日、そんな私が、ベッドルームのスイッチを切った。
ちなみに、我が家には蓄光は貼ってない。
スタスタスタ、手探りもなく見事に、ベッドの端にたどり着き、
どさっと腰を降ろす。
やには、ドオ~っと倒れこむ。
ゴ~~ン!
頭頂部がヘッドボードに激突した!
暗闇の中、文字通り、目から星が飛びだした。
ど・ど・どぎゃんこつネ?
どうやら、腰を降ろした地点が、
いつもより、
頭方向に10cmズレていたのである。
お仕事の疲れだろうか・・スポーツのやり過ぎだろうか・・
それとも、さっきシタタメタ純米酒の喜びだろうか・・
キラキラ!
我が家の蓄光は、私の目の前を飛びかい光り輝いていた。
「ケッ、つまらねぇ男になっちまったなあ~」