モノをぶちまける事がある。
《ぶちまける》
丁寧に器に盛った惣菜を、思わずぶちまける。
原因は、さしたことではない。
つまづいたに過ぎない。
もしくは、
手が滑ったのである。
単なる不注意だ。
不注意くらいで、ぶちまけられた惣菜は悲しい。
床の上に、野菜や肉が散らかっている。
茶色い汁までが飛び散っている。
ほんの数瞬前まで、食べ物に見えたモノが、
ただのゴミに成り下がろうとしている。
さて、どうしたものだろう?
掃除をしなければならないのは分かっている。
ただ集めて捨てればいいのだろうか?
捨てていいのだろうか?
野菜は洗えばなんとかなる。
肉はどうだろう?
床といっても、靴で歩いている場所だ。
悩ましい・・
ぶちまける・・
これまで一度もぶちまけた事のない人はいるだろうか?
そんな幸せな方がいるだろうか?
ぶちまけ慣れた人は、
サラダや、惣菜なんておこちゃまぶちまけだ。
汁もの・・究極は、グツグツ煮えた鍋だ。
「はい、どいてどいて!」
鍋を胸の前に抱えて台所から出てくる。
そこで、つまづく。
どうなる?
ぶちまける!
人はぶちまけたその後、
10秒ほどじっと突っ立っていると言われている。
目の焦点が合わなくなり、不必要な言葉を漏らすと言われている。
「なかった事に・・」
ぶちまけた本人より辛いのは、
ぶちまけられたその場にいる友人だ。
ここは、どうしたものだろう?
(ああ、かまわないよ~)
とても言えた雰囲気ではない。
狼狽する本人より、さらに狼狽したフリをするべきだろうか?
あと片づけに没頭してその場をやり過ごすべきだろうか?
オロオロして、不必要な言葉を漏らすと言われている。
「見なかった事に・・・」
台湾の鍋屋の食材