
昨日のブンヤのイリョウの話だ。
そもそも、中学1年の入学式の時に、肩を叩かれた。
「君も転校生だろ?」
教室の後ろで、友人もいなくポツンと立っていた、
小さなけんじろう君に、声をかけたのがイリョウだった。
以来、中学、高校、大学と、
共に遊びほうける友人であった。
しかし、ヤツは、運動神経に問題があった。
イリョウは、当時身体が大きかった。
足もクラスイチ速かった。
クラスで一番足が速いのに、
運動会でリレーメンバーに選ばれなかった。
なぜか?
その理由が、ふるっている。
《真っ直ぐしか走れない》
一周250mのトラックを走る時に、
カーブを曲がれないのだ。
カーブに差し掛かると、
どんどん曲線のラインから離れていって、
どこかに行ってしまう。
曲がれないだけではない。
ストップもきかなかった。
例えば、ラグビーの試合だ。
足の速いヤツが、
ウイングというポジションをやる。
パスが、次々に廻ってきて、
ウイングが最後の最後にトライをする。
ラグビーの花形だ。
誰もが、ウイングをやりたがる。
そこで、イリョウだ。
足が速いというだけで、ウイングに抜擢された。
さあ、試合本番だ。
ボールが、次々パスされて、ウイングのイリョウまで渡った。
後は、俊足をとばし、ゴールエリアにトライするだけだ。
<サイ>とのあだ名を付けられたイリョウ。
ボールを抱えたまま、突進した。
敵は、その速さとサイのごとき勢いに恐れおののき、
誰もタックルしない。
独走である。
あとは、エンドラインを超えたら、ボールを地面に付ければいい。
我らは、トライを確信した。
ところがである。
イリョウは、曲がれないだけでなく、転べないのだ。
ラグビーのトライでは、
地面に転んで、ボールを地面につける。
考えてみれば、
人間が全力疾走で走っている最中に転ぶのはおかしい。
おかしいが、ラグビーでは、そのおかしい能力を要求される。
イリョウには、その
おかしい能力がなかった。
エンドラインを駆け抜け、最終ラインも駆け抜け、
どこまでも、走り続け・・
得点にならなかったのだ。
見た事がないあまりの出来事に、敵も味方も、
しばし、口を開かなかった。
審判の先生でさえ、笛を吹けなかった。
「こういう場合、どこから、リスタートするんですか?」
私の質問に、先生は・・
『今のは、忘れよう』