
この写真の意味がわかるだろうか?
布団とバケツがふたつ見える。
そこは、山小屋である。
厳冬期である。
外気温マイナス10度になる環境だ。
たまたまその日、気温が緩んだ。
緩むと、山小屋の屋根にかぶさっている雪が溶ける。
溶けた雪が、運悪く屋根の割れた隙間から、
寝室に漏れて来た。
<雨漏り>
そこに居たのが、我らだ。
我ら6人の布団だ。
ポトンポトンッ
一分に一回しか落ちて来ない小さなポトンだが、
積雪期の山小屋に眠ろうとしている身になってみれば、
切実なポトンだ。
許せないポトンだ。
「で、どうする?」
バケツを囲んで、相部屋の6人が、腕組みを始めた。
誰か一人が、よその部屋に行けば、
この問題は解決する。
その誰か一人をどうやって選ぶか?
クジ?
ジャンケン?
どの採択をしようが、
選ばれた人はマイナスのベクトルを背負ったまま、
よその部屋にゆく。
それでいいのか?
そこで、私が、公平なジャンケンを提案した。
《
勝った奴が、出てゆく》
ジャンケンで勝った奴が、堂々と胸を張って出てゆくのだ。
勝者の寝る場所が廊下なのか、屋根裏なのか定かでない。
定かでないが、残ったこの部屋より、
ガクンとレベルが下がるのは否めない。
でも、君は、ジャンケンに勝ったんだ。
勝ったという誇りを持って、この部屋から出てゆくのだ。
この提案に、同室の誰もが喜んで賛同した。
ハタとひざを打った輩までいる。
「ほんじゃいくよ~ジャ~ンケンポン!」
不思議な事にこういう時には、一発で決まる。
ヒザを打った彼が、一人だけ、グーを出していた。
あのね、人は疲れていると、パーを出す動物なんだヨ。
ごめんね、追っ払って・・
ところが、その夜、一晩中・・
バケツに落ちる点滴のような音に、
ジャンケンに負けた5人は、打たれ続けたのであった。
テンッ・・・・・テンッ・・・・・テンッ・・・・・