
時代劇の撮影をやっている。
侍が登場する。
日本の侍は特殊な精神を持っている。
「暑い寒いは気のセイ、きつい苦しいはもってのほか、
よもや、痛いなんてのは、親が死んでも口にしない」
それが、侍だ。
《サムライジャパン》
サッカー日本代表のコードネームだ。
サムライと名がつくからには、
親が死んでも、痛いと言わないのかと思いきや、
「痛い痛い!」
ピッチの上を転げまわっている。
今の時代・・
サッカー選手は、サムライになれない。
敵のファールを受けると、
たとえ痛くなくとも、痛いフリをして、
芝生の上をのた打ち回らなければならない。
もし・・
もし、サムライ魂を発揮して、
痛くとも、何食わぬ顔でスックと立ち上がり、
プレーを続けると、どうなる?
敵は、さらに、酷いファール行為をしかけてくる。
その挙句、ケガに結びつくファールを受けて、
選手生命を失ってしまうかもしれない。
いや、かもじゃない。
必ずそうなる。
だから、たとえサムライ魂をもっている世界屈指の選手ですら、
芝生の上で、泣き叫ぶ。
その姿は、痛々しい。
言い方を変えると、みっともない。
いい大人が、することではない。
よもや、身体を鍛えたスポーツ選手の所業ではない。
ましてや、世界的に尊敬されるトップ選手が、
人前で、顔面クシャクシャにして泣き叫ぶ姿を、
見せざるをえないのが、悲しい。
例えば、ハンマー投げの室伏選手が、
投げるたびに、地面にうっぷし、
おうおうと泣きながらのた打ち回ったとしたらどうだろう?
例えば、イチロー選手が、身体に近いところに投げられるたびに、
「オ~マイゴッ!オ~マイゴッ!」
叫びながら、打席でのた打ち回ったら、どうだろう?
マラソンの川内選手が、隣の選手に足を踏まれたと、
大騒ぎしてレース中じだんだ踏んだら、どうだろう?
コンクリーの上を転げ回ったら、どうだろう?
今、唯一といっていい<のた打ち回り系>のスポーツが、
サッカーだ。
現行のルールでは、仕方がないと思われている。
選手の身を守るために、必要だと、考えられている。
サムライ精神は、捨てろと嘆かれている。
うむ・・まあ、いい・・今は。
しかし・・50年後も、サッカーは、
<のた打ち回り>スポーツとして君臨しているのだろうか?
サムライの子孫としては、すこし、さびしい。

痛くとも痛くない修験者 山伏