
大キレットを登りきり、北穂高岳頂上の小屋にたどり着いた。
すると、そこには、別コースからやってきた大勢の登山者が。
その中に、驚くべき方がいた。
《全盲》
まったく目が見えない女性の方が、
北穂高岳に登頂していたのだ!
「どのコースで、登ってきたんですか?」
『涸沢から』
「あの岩だらけの、南稜を!」
『はい』
「まだ昼前ってことは、この短時間で?」
『皆さんのおかげで』
アシストをされている数人の方たちがおられる。
特に屈強な方たちではない。
驚いた!
純粋に驚いた・・
そして、その後、彼女たちが、下っている場所にでくわした。
サポートを受けながら、岩場を下っている。
命綱など付けていない。
言葉でアシストされているだけだ。
試しに、私も目をつぶってみた。
おもわず、近くの岩にしがみついた。
無理だ。
一歩ですら足を踏み出せない。
彼女が、北穂高岳南稜を登って降りている事実に比べれば、
私の大キレットなんぞ、平地を歩いているようなもんだ。
人間の可能性は、どこまでひろがっているのだろう?
感動した・・
アナタは素晴らしい。
いや、
アナタたちは素晴らしい!