「ラム好きですかあ~?」
酒の話ではない。
ヒツジの話だ。
30年ほど前、北海道は帯広で、ラムを食べた。
「今朝、しめたヒツジなんだわサ」
地元の方が、嬉しそうに鉄板の上にのっけてくれる。
「こんだけのピンク色は見た事ないっしょ」
ヒツジ肉と云えば、ジンギスカン。
当時、冷凍モノしか見た事がなかった私。
湯気の出そうなピンク色の肉を、軽く炙り、ほおばる。
あまりの旨さに、
椅子から転げ落ちそうになった記憶があった。
あの旨い想い出をもう一度・・
今夏の暑いある日、帯広空港に降り立った。
23℃
北海道は、涼しく済みわたっている。
<ラム日和>ではないか!
「生ラムを食いたい!」
北海道に渡る前に、わがマネージャーに、店を調べさせた。
暫くして、マネージャーから返事があった。
『イシマルさん、ラムは生では食べないそうです』
アホなマネージャーはほっといて、タクシーの運転手さんから、
旨さ情報を仕入れる。
日が暮れるや、教えてもらったラム屋に向かう。
ガラガラ、扉を閉めるまもなく・・
「ラム3人前下さい!」
『あいよ』
焦る私に、こともなげに対応してくれる。
『はい、どうぞ』
出されたラムは、30年前と変わらぬピンク色であった。
生ビールで乾杯をする頃には、ジュージューと肉が焼けだす。
半生焼きくらいで、ジンギスカン鍋からひっぺがし、
タレにつけて口に放り込む。
ガ~~~~~ン!
椅子から転げ落ちそうになった。
何度食っても、旨いものは旨い!
何度でも、椅子から転げそうになる。
ラムを食すには、椅子文化は危ない。
特に、真ん中に穴があいた丸椅子は、危険だ。
ビールの勢いも手伝って、そのうち落ちるかもしれない。
ラムは、
椅子から転げ落ちる確率の高い食材、
ベストスリーに入るだろう。
4回ほどオカワリを重ねて、ようやく腹を撫でまわした。
私の中で、ラムと帯広は同義語になっている。
ゆえに、「おびひろ」と囁かれただけで、涎が噴きだし、
椅子から転げ落ちそうになる。
私が、丸椅子に座っている時は絶対に試さないで下さい。
ラムタン