富士山頂上に虹が出る
富士山の頂上は、どこの県でもない。
富士山をめぐって、山梨県と静岡県が、しのぎを削っているが、
頂上から、100mほど降りた辺りまでは、
どこの県にも属さない。
日本も、粋なはからいをしたものだ。
富士山好きの方でも、静岡側派と山梨側派に分かれたりする。
私は、どちらかと云うと、山梨側派である。
理由は簡単、夏に山梨県の本栖湖に通っているからだ。
以前は、五千円札、今は千円札のデザインになっている
湖に映る富士山が見られる本栖湖だ。
その撮影場所自体が、観光地になっている。
晴れていると、車がわんさか止まり、
皆がカメラ片手に降りてくる。
「ああ~ここよここよ、ホラ見てそっくり!」
千円札をサイフから引っ張り出して、目の前に掲げている。
「あそこの山がコレでしょ、で、こっちの出っ張りがアレで」
そっくりである事が、ことのほか嬉しいらしい。
「はいはい、写真写真!」
誰もが、そっくり写真を撮ってゆく。
しかし、私は知っている。
実は、千円札の風景が撮影された場所は、そこではないのだ。
よくよく観察すれば、千円札と微妙なズレを発見する筈だ。
ではどこなのか?
その道路の裏手に、小さな看板が立っている。
数分小道を山側に登った所ですよと、示唆するカンバンだ。
しかし、殆どの方は登ってゆく気配すら見せない。
ところで、先日、静岡側の親戚と共に、この場所に行った。
「ほ~ん、変な形をしているなあ」
どうやら富士山とは、
<見慣れた形に惹かれる存在>なのかもしれない。
反対側から見て、違和感を覚える富士山に、
なじめないのかもしれない。