んん・・・静かだぁ・・
この感蝕は・・羽毛布団・・
腕が少しだけ、布団からはみ出している。
(ここはどこだろう?)
私の目覚めは、こうして始まる。
では、わたしの目覚めの<3秒間>を詳細にご報告してみよう。
常日頃、あちこち旅している私である。
ロケなどもさることながら、プライベートでも、動き回る。
旅館、ホテル、ペンクル(車中泊)、自宅、友人宅などなど。
朝の目覚めは、<音>から始まる。
んん・・音がほとんどしない。
わずかだが、木がこすれる様なざわめきが、遠くでしている。
冷蔵庫などのうなり音もない。
次は、<布団の感蝕>だ。
羽毛布団である事がわかる。
カバーはサラサラとした新鮮なクリーニング物だ。
枕は、柔らかくはないが、やや硬い。
(ふむ、自宅ではないな)
腕が少し敷布団からはみ出している。
これは、ベッド?
それとも、畳の上に敷いている布団?
敷布団の沈み具合からみて、ベッドだな。
次は、<光>だ。
目を閉じているにも拘わらず、やや明かるさを感じる。
自然光がカーテンの隙間から漏れているに違いない。
(ホテルとすれば、どこの?)
喉が渇いている。
部屋の空気が、若干乾燥している。
(え~と昨日何してたんだっけ?)
充分眠ったようである。
「はあ~」
ため息を漏らしてみる。
母音のみの声出しであるのに、やや反響する。
(これは、きっとビジネスホテルだ)
暖房や冷房の空調の音がしない。
暑くも寒くもない。
頭は、急速に目覚め始めている。
(え~となんだっけ?なんだっけ?)
今日は、確か、遊びではないような気がする。
気が張り詰めている感覚がある。
(ん・・もう起きなくちゃならないのかな?)
そうだ、わかった!
昨夜、ロケ現場の近くのホテルに宿泊したのだった。
朝早く、迎えが来る手筈になっていた。
よし、起きよう!
ガバリ!
ここまでが、目覚めの3秒間である。
その足で、トイレに向かう。
っと、チリチリチリチリ、目覚ましが鳴っている。
私の典型的な目覚めをレポートしてみた。
そして、不思議なのだが・・
自宅で目覚めても、この3秒体験は、必ず起こるのだ。
(ん・・ここは?)