小豆島
私は、長年、飛行機を着陸させてきた。
着陸歴35年と言おう。
飛行時間に換算すると、1000時間を超えるフライトだ。
勿論、離陸もしてきたのだが、着陸の方が、面白いので、
着陸に力を注いできた。
「イシマルさん、パイロットなんですか?」
って、んなバカな・・
飛行機に乗ってどこかへ向かう。
その着陸時に、私は、こっそりパイロットになるのである。
窓の外を眺めながら、着陸動作をシミュレーションしている。
いや、頭の中だけではなく、
実際に、手足を動かしている。
特に、足の方向舵ペダルは忙しい。
ここで、飛行機が、なぜ曲がるのか考えてみよう。
飛行機が曲がる為には、3つの操作がいる。
目の前のハンドルを、引くと上昇し、押すと下降する。
では、
左右に曲がるのはどうするか?
そのハンドルを車のように、曲げてみる。
右に曲げると、機体は、斜めになる。
しかし、斜めになるだけで、真っすぐ飛んでいる。
右に曲がるには、足のペダルを使わなければならない。
ペダルの操作で、尾翼に付いている方向舵が、動き、
飛行機は曲がるのである。
つまり、手足を同時に使わなければ機体は曲がらない。
では、もし、足だけ動かしたらどうなるか?
機体は、12時方向からそっぽを向きながら、
12時方向に進んでゆく。
斜に構えて歩いている人に似ている。
1時方向を向いたままの飛行機が、
12時方向に飛んでいるのだ。
これは、着陸時に、横風が吹いている場合に、
実際にパイロットがやっているテクニックだ。
これらの事は、教わったのではない。
日々の着陸体験で、私が勝手に身に付けた。
ただし、この着陸の欠点は、
<前方が見えていない>
横の窓だけが頼りだ。
もしくは、前方スクリーンに映る映像でなんとかするしかない。
これまで、様々な空港に着陸してきた。
最も多い羽田空港には、風向きによって、
どちらからでもランディングできる。
房総半島上空からのシミュレーションも完璧だ。
ドキドキさせられる空港は、鹿児島空港だ。
そこは、高台にある。
台地に降り立つのだが、低く進入してしまうと、
崖にぶつかるような恐怖感がある。
しかも、目の前に美しい高千穂の峰が広がっている。
つい見とれて、よそ見運転をしてしまいかねない。
最も緊張を強いられるのは、伊丹空港と福岡空港だ。
なんたって、ビル群の上を掠めながら、
進入しなければならない。
家々が、連なるその先に滑走路がある。
100%失敗は許されない。
この二つの空港に降り立つと、
しばらく頭がボ~となる。
到着すると、たまらずトイレに駆け込むのはその為か?
今度生まれてきたら、本物のパイロットになろう・・と。
田子の浦と富士山