
《バリ》という魚がいる。
九州で釣りをしていると、バリが釣れる。
堤防や、岸壁から釣り糸を垂れると、バリが釣れる。
このバリは、嬉しくない。
背びれに毒がある。
こいつに刺されると、腫れあがる。
どれくらい腫れあがるかと云うと、手がグローブになる。
そのバリを、小学4年生のけんじろう君が、釣り上げた。
場所は、50年前の大分県別府の港だ。
バリの知識がない、けんじろう君は、
その魚体の美しさに、思わず、歓声を挙げた。
バリとは、キラキラした美しい魚なのだ。
大きさは5~10センチくらい。
そのバリが針にかかると、竿で抜き挙げる。
抜き挙げた。
と、バリが空を飛んでくる。
見事な放物線を描いて飛んできた。
キラキラ・・
そういう運命だったのか・・バリは、そのまま、
けんじろう君の頭のてっぺんに着地したのだ。
グサッ!
刺さった。
背びれが、頭のてっぺんに刺さった。
周りにいた大人たちが、パニクった。
小学生の頭に、
バリが逆さまになって刺さっている。
まだピクピクしている。
現代であれば、面白ビデオで投稿したい映像だ。
その小学生は、ニコニコ笑いながら、頭部を指差している。
自分に起こったハプニングが楽しいらしい。
ところが、周りの大人たちは、大騒ぎだ。
「誰か、バリを取れ!」
その夜、大熱を出した、けんじろう君。
父親が、病院へ抱えて走り回った、けんじろう君。
今にして思えば、あの時、
バリに刺されてさえいなければ、
今頃、ひとかどの人物になっていたのではないだろうか?
あるいは・・
いまだ髪が健在なのは、バリの毒のおかげだろうか?