
私の隣にいる大きな白人のオジサン、誰でしょう?
《ビル・ロビンソン》
今年の3月3日に亡くなった、元プロレスラーである。
40年ほど前、人間風車(ダブルアームスープレックス)
というワザで、
日本中を席巻したベビーフェースだ。
ベビーフェースとは、良い人という意味である。
悪役の反対語と思っていただければいい。
正統派のテクニックだけで、悪をバッタバッタとやっつけた。
良い人が日本人以外となった初めてのプロレスラーだった。
そのビルロビンソンが、我らの舞台に出演してくれた。
《ニコラス・マクファーソン》後藤ひろひと作演出。
15年前のことである。
当時、ビルは、東京の高円寺に住んでいた。
スネークピットジャパンという格闘系の団体の顧問をしていた。
良い人の宿命で、膝をやられていた。
立ったり座ったりで膝が悲鳴をあげる。
そこで、イシマルが、お灸の先生になった。
「ハ~イ、オキュウの時間ですよ~」
『Oh、ケンチャ~ン、待ってたゼ~』
特大の強烈なお灸を、下半身にてんこ盛りした。
あまりの身体の大きさに、買ってきたお灸はすぐに底をついた。
書い足しに行くついでに、
身体の大きな人用の洋服屋を探し出し、
トレーナーシャツを買ってきた。
7Lである。
7などというLが有る事自体に驚いた。
ビルは、お灸のお礼にと、
イシマルに、
人間風車のワザをかけてくれた。
勿論、完全にかけたら、私は死んでしまうので、
半分だけかけてくれた。
つまり、頭上まで持ち上げられたのである。
苦しかった。
しかし、幸せだった。
憧れのプロレスラーに、ワザをかけられている・・
試しに、コブラツイストを私がかけようと試みたのだが、
ビルにとって、それは、
ハエが身体をはっている程度でしかなかった。
親指と人差し指でつままれて、ヒョイと放りだされた。
現役時代、ビルが、
首だけで、ブリッジ(エビぞり)しているその腹の上に、
レスラーが二人立ち、ジャンプしていたものだ。
あの肉体とワザを持ちながら、
イギリスで生まれたビルは、知性あふれる紳士であった。
『ケンチャン、教えてあげよう』
「ハイ!」
『最も、痛いワザはネ・・・』
「なに?」
『ヘッドロック』

ナム~