岩手県の、とある町の旅館の部屋にいた。
昔からある、いわゆる駅前旅館だ。
「おばちゃん、オチョウシ2本持ってきて!」
寅さんの声が聞こえてもおかしくない旅館だ。
床の間があり、掛け軸がかかっている。
その前には、小さな二宮金次郎の彫像が置かれてある。
畳の匂いがプ~ンと鼻をつく。
ドタっと布団に倒れると、静かさに驚く。
町中なのに、この静けさはどうだ!
風呂にでも行こう。
木の階段をトントンと降りると、
ガラガラ引き戸のお風呂があった。
その扉前に、白板がある。
どうやら、お風呂は順番制らしい。
自分の部屋番号札を、早い者勝ちで、
入りたい時間に置いてゆく。
最近の映画館と同じで、入れ替え制である。
ガラガラ~
なるほど、大勢では入れない。
まるで、人んチに泊めて貰っているようだ。
なんかいいなあ、この落ち着き。
廊下がギシギシ音がする。
だからそっと歩く。
目覚まし時計は無い。
だから自分で起きる。
カーテンなんてのも無い。
だからバタンキューで眠りにつく。
コケコッコー
目が覚める。
「おばちゃ~ん、朝ごはんどこですかぁ~?」
『はいはい、こっちだヤ』
出てきたオイチャンが、美味しい朝ごはんを拵えてくれた。
『ほい、これサービス』
なぜか、コーラがグラスで出てきた。
寅さんの〆がコーラかあ~
ま、この辺のアンバランス感が、とても楽しい駅前旅館である。
入浴 予約板