京都、南座という劇場は、大歓楽街のど真ん中に位置している。
祇園の真っただ中だ。
この南座・・
どこかの劇場に良く似ている・・と腕組みしていて、
やっと分かった。
ニューヨークのブロードウェイの劇場だ。
それも、昔からある由緒ある劇場である。
それらは、道路から、客席までが近い。
道路の歩道から、
そのまま階段を使わずに、客席に行ける。
フラットである。
ロービーを広くとる考え方がない。
客席もこじんまりとして、客とステージが近い。
つまり臨場感にあふれている。
南座とブロードウェイ・・
建設された年代が同じ頃のような気がする。
あちらは、楽屋を出れば、
フォーティセカンドストリートの繁華街。
そして、こちらは、京都祇園だ。
四条の橋を渡れば、先斗町(ぽんとちょう)があり、
高瀬川があり、飲食店が、数百、いや、数千軒、
横にも縦にも伸びている。
舞台が終われば、お客さんは、連れだって店を訪れる。
幕が降りた役者達も、ゾロゾロと街に繰り出す。
観光客で混雑する小道を、そぞろ歩く。
店は決めていない。
行き当たりばったりである。
頼りは、ハナの効きだ。
良さげな店を、ハナで効きわける。
「ごめんください、入れます?5人・・」
「川床(かわどこ)あいてますかいネ?」
川床というのは、鴨川にセリ出したオープンテラスである。
暑い夏でも、川面を渡って来る風が涼しく、
ビールを傾けるには、最高の場所だ。
よって、予約がなければ、まず席はない。
我々のハナの効きは素晴らしく、
飛びこみにも拘わらず、最前列の川面の席に案内された。
「カンパ~イ!」
お外で、ビールをグビグビやるのはいいもんだ。
常日頃、本栖湖キャンプ場でグビグビやるのと、又、趣が違う。
「シャシン、トリマショカ?」
カメラで撮りあっていた私達に声をかけてくれたのは、
隣で食事をしている外国の方だった。
そう、川床には、外国人が圧倒的に多い。
「オイシデスネ」
なぜか箸で、ステーキをつつきながら、日本酒を傾けている。
聞き漏れてくるワードに、牛若丸や弁慶、新撰組が登場する。
それを要約すると、明日は・・
「三島由紀夫の金閣寺に行って、清水の舞台から飛び降りて、
舞妓さんと写真を撮り、保津川の川下りをする」
のだそうだ。
動線がデタラメだが、ま、いっか・・
南座から川床を眺める