
我らが隊員、杉山くんが、フィンランドから帰ってきた。
「
フィンランドで一番まずいアメ買ってきました~」
えらいやっちゃ。
何でも一番がいいと、分かっている男である。
まずかろうが、うまかろうが、お土産はおみやげだ。
さっそく、袋を破ってみた。
円盤状の、トローチのような形状の黒いアメだ。
ポイッ
口に入れてみるが、すぐに味はしない。
5秒ほどで、ジワリとハッカ系の香りが滲み出てくる。
10秒後、なにやらしつこそうな甘みが、染み出てきた。
固いアメではなく、やや柔らかい。
噛んでもいいような気がしないでもない。
酢昆布を固めて、妙に甘くして、ハッカをまぶして、
どうかした味である。
1分後、そのアメは、クズカゴの中にあった。
耐え切れず、吐き出したのである。
フィンランドの方には申し訳ないが、
フィンランド好きの私の舌でも、
このアメは受け入れられなかった。
まあ、日本の我らも、梅干のアメなんてのを、
うまいうまいとほざきながら舐めているのだしな・・・
それにしても杉山くんは、なぜ私へのお土産に、
このアメを選んだのだろうか?
フィンランドで食べた時、自分だけ、
抗いがたい気持ちになったのが、
口惜しかったのだろうか?
ここはひとつ、
身体よじれる同じ思いを、わが事のように、
共有してくれる人を選んだのだろうか?
自分ひとりで地団太ふむ孤独に、耐えきれなかったのだろうか?
とりあえず、結果の返事をしておこう。
いや・・そうか・・
不味かったと文句を言えば、こう返ってくるだろう。
「だからぁ、
一番まずいと言ったじゃないですかぁ~
食ったんすかぁ~もの好きですねえ~」