
「イシマルさん、よくコボしますよネ」
共演の若き女優に、指摘された。
一緒に皆と食事をしていると、「よくコボす」のだそうだ。
うん、よくコボす。
今に始まった事ではない。
ではいつから始まったかと履歴を辿れば、
子供の頃まで遡る。
それも、幼稚園まで遡る。
コケ~コッコッコ
鶏を、わが家では飼っていた。
もちろん庭で飼っていた。
その鶏が、ある時間、室内に放たれる。
けんじろう君が食事の時間だ。
コケコケコッコッコ~
母親が、鶏の首根っこを掴み、けんじろう君の足元に放る。
ボロボロボロ
鶏の嘴の先に、食糧が落ちてくる。
なぜかは知らねど、けんじろう君は、口元が緩いらしい。
ボロボロボロ
コッコッコッコ
時は、経つこと数十年・・・
ボロボロ
「又、落ちてますよっ」
まるで、お爺ちゃんに、孫が諭すかの如き発言。
「ほら、麻婆豆腐がズボンに!」
まるで、認知症を危ぶみ心配する孫のような発言。
「シャツにミートソースが!ティッシュ、ティッシュ!」
まるで、小さな子供に、お母さんが叱るような発言。
あのネ・・
言っとくがネ・・
コボすのは、小さい頃からの癖でネ。
食べている時に、
いろんな事を考えているからでネ。
いろんな事が面白くて、そっちに頭が行っているからでネ。
そもそも、指先は非常に器用でネ。
いまだに、
箸でパチンコ玉を摘まめるほど器用でネ。
利き手でない左手でも、パチンコ玉を挟めるんでネ。
本気になったら、コボす筈はないんでネ。
なんだったら、同時に両手の箸で,
ひとつづつパチンコ玉を摘まんでも構わないんだがネ。
うむ、だのに・・
どうして私のパジャマの前面は汚れているのだろう?
「早く洗濯機入れて!」
『は~~~い』

私のまわりによってくる鮎たち