
キャンプで、目玉焼きを作ろうとしている。
ここは、本栖湖だ。
本栖湖には、浩庵(こうあん)荘という宿がある。
20年前から何かとお世話になっている。
主は、まもなく60歳になる赤池さんだ。
赤池さんには、息子がいる。
20年経った今や大きくなり、結婚もして、
浩庵荘を切り盛りしている。
ウインドのレースでの運営や、色んなシーンに登場する。
昨年も、ウインドの撮影では、ボートを運転してくれ、
ずいぶん世話になった。
そのお礼に翌週うかがった時のことだ。
「先週は、ありがとうございました」
『あ、はい』
ん・・?
反応が薄い。
先週あれほど、面白おかしく会話をしていたのに、
随分、淡泊な態度である。
ま、そんなもんだろう・・・
以前から、その傾向はあった。
元気に話をしていたかと思えば、
翌日、急に寡黙になったりする。
変わった息子だなという感想であった。
昨日も、先週のお礼に、浩庵に向かった。
「この間は、ありがとうございました」
『あ・・はい』
「え~と、
ヨウスケさん」
『あ・いえ、
ユウスケです』
「え?ヨウスケさんて、ユウスケだったの?」
『いえ、
ヨウスケは兄貴です』
「・・・・・?」
『僕ら、双子なんです』
「・・・・・・・・・・・・」
えっ?
なになに?
何の話?
双子って、誰が?
いつから?
君はだれ?
僕はだれ?
何がどうなってるの?
双子って、じゃあ、あの時のだれは誰?
「ねえ、ツッシー、知ってた?浩庵の息子、
双子だって?」
『ええ、そうですよ』
えええ~~知ってんだぁ~~
知らなかったの、ぼくだけ~?
ガア~~~~~~~~~~ン!
それで、会話が、いつも変だったの?
ふむ、理解した。
アナタに、教えておきたい。
アナタがお付き合いしている相手が、
ある日、とても優しかったり、
次の日、手の平を返したように冷たくなったりしたら、
たぶん、ソレは・・・双子だな。

出来たのは、双子の卵の目玉焼き