
私の弱点がわかった。
昨日は、人間ドックの日だった。
「さあ、どうぞコチラへ」
ドックとは、最初に、採血をされる。
「ちょっとチクっとしますからネ~」
お決まりの、おなざりの挨拶で、針が刺される。
「アレッ?、静脈が・・・アレッ?」
注射器を持った看護師さんが、あたふたしている。
その挙句、こう刺したり、中で針を刺し返したり、
引き抜いたり、再度試したり・・
「すみません、もう一回やらせて下さい」
『ああ~~いですヨ、どうぞ何度でも』
大人の対応を見せる。
「アレレッ、血管が出てこないですねエ~」
採血する際には、二の腕にゴムチューブを巻き、
親指を内側にして握り、ヒジの内側の血管に、
注射針を打ち込もうとする。
これまで長い年月の間、何度も繰り返してきた作業だ。
そのたびに、採血係の方に言われたものだ。
「血管が浮かび上がって、刺しやすいですねエ~」
私は、採血係りにとっての、優良児であった。
プックラ膨らんだ血管に、目をつぶってでも刺せた。
そんな血管が幾本も、浮かんでいたものだ。
「風たちぬ、いざ生きめやも」
薄幸の女性が、「血管が浮き出ない」と嘆くのを、
『へっ』
居丈高に、覗き込んでいたものだった。
それが、昨日・・・
「アレレッ、腕、叩いていいですか?」
パシパシッ
「出ないですねエ~」
ど・どうした事だろうか?
血管に何か、悪事を働いたのだろうか?
そんな時だ・・
「今朝、人間ドックだから、
何も食事されてないですよネ」
『はい』
はいと返事しながら、体の異変に気付いた。
身体に力がない。
身体に血色がない。
頭がぼんやりしている。
なるほど・・・
私という人間は、
朝飯を食べなかっただけで、
様々な障害が生じる人間であるらしい。
自覚症状もさる事ながら、
<血管>が、ものの見事に、委縮した姿を見せてくれた。
ここまで、読んでくれたアナタに、言い訳を言っておく。
私は、たとえ昼ご飯を抜いても、
たとえ夜ご飯を抜いても、それなりに元気である。
とび回っている。
ところが・・
朝ごはんを抜くと、
いや、抜いただけで、突然、人が変わるらしい。
人が人でなくなるらしい。
看護師さんが、採血の注射針すら打てなくなる体に、
変貌するらしい。
「腕、変えていいですか?」
『二本しかないですけど、どうぞ』