≪活字中毒≫という言葉がある。
常に、どんな時でも、活字を見ていなければ気が休まらない、
と云うものだ。
朝起きると、新聞を探す。
トイレにまで持ち込む。
食事中も、チラチラと視線をおくる。
駅に行く。
エスカレーターに乗り、じっとしている間、
カバンから文庫本を取り出し、読んでいる。
おそらく、1ページさえも読めないと思われるのだが、
寸暇を惜しんで、活字を読んでいる。
列車に乗る。
すぐに文庫本をひらく。
文庫本が無ければ、週刊誌をひらく。
それも無ければ、天井からぶら下がった週刊誌の広告に目をやる。
やがて読みつくすと、
壁のコマーシャルをむさぶるように読む。
専門校の入学勧誘を、読み尽くす。
ついでに、前に座っている乗客のカバンの銘柄なんてのも読む。
Tシャツに書いてある英語を読む。
「I am poor」
もう、読むものがない。
すると、窓の外に目を移す。
町中の看板を読みだすのだ。
新しく出来たパン屋の広告を拾い読む。
「焼きたてホカホカパン、本日の・・」
あ~読みそこなった。
次から次に飛びすさる文字の流れ。
通り過ぎる駅名もすべて読んでゆく。
<東北沢> <代々木上原> <代々木公園>・・・アッ!
し、しまった・・・ひと駅乗り過ごした・・
三陸鉄道 摂待駅