
≪時を告げる時計≫
今、私が欲しい時計はコレだ。
正直に言おう。
年をとると、夜中に目が覚める。
覚めたはいいものの、いったい何時なのか分からない。
分からなくてもいい、このまま眠れれば。
では、目が覚めた瞬間を、実況中継してみよう。
ふむ・・なんか目が覚めたようだ・・
いや覚めてないかな?
望むらくは、このまま眠りたいなあ・・
眠るにしても、今、の時間が分かりさえすれば、
ふむ・・時間を知るためには、体を起こして、
目覚まし時計に触るしかない。
触ると、表面が光って、時間を表示してくれる。
目でそれを確認する。
待てよ?
ソレをやったら、ほんとに目が覚めてしまうじゃないか。
ではどうしたらいい?
このボ~としたままで、時間が分かる方法はないだろうか?
ここで、私が欲しい時計が登場する。
私は、ボ~としたまま横たわっている。
ただ一言、
小声でささやく。
「なんじ?」
するとだ・・その微細な音を感知した時計が、
同じく
ささやき声を返してくる。
『
にじ さんじゅうにふん』
このささやきには、『です』という語尾もない。
聞こえるか聞こえないかの小さなささやきだ。
安心した私は、いつのまにか眠りにつく。
しばらくして、再びささやく。
「なんじ?」
『
よじ いっぷん』
私は、しばらく眠れた事に、おおいに満足する。
「なんじ?」
『
はちじ ごじゅうきゅうふん』
ガ~~~ン!寝過ごした・・
この時計は、やはりバタヤンにお願いするしかないだろう。
大きな会社で、
こんな小さなお願いが叶うのだろうか?