リチャードが、「10キロ痩せた」と叫びだした。
リチャードとは、我らがウインドサーファーの中でも、
二枚目で通っている人物である。
ハリウッド俳優の、リチャード・ギアに似ているんじゃね?
って事で、リチャードの愛称が付けられた。
そのリチャードが、
一か月半で
10キロ痩せたと豪語している。
普通、人が10キロ痩せれば、
「おう、痩せたネ」
皆が反応する。
「ど、どしたの?激ヤセじゃ~ん!」
この言葉がふりかかる。
ところが・・
リチャードの場合、悲しかった。
誰からも、言葉をかけて貰えない。
原因は、はっきりしている。
元々の顔がスリムな顔立ちをしている。
二枚目のマイナス要素として、<細い顔出ち>をしている。
ゆえに、そもそも
太っている体だとは誰も気づいてもいなかった。
よもや脂肪たっぷりの体を抱えているとは、思いもしなかった。
思っていたのは、本人だけだった。
その本人が、一大決心をしたのだ。
「痩せてやる!」
かくして、一か月半で、10キロ痩せた。
痩せたものの、悲しいかな・・誰も、気づいてくれない。
悔しい。
それならば、自ら、主張するしかない
「痩せたんです、ボク・・」
『へ~』
「へ~じゃなくて、ほんとに痩せたんです」
『へ~』
「毎日、
腹筋300回連続でやったんです」
なんやと?
今、腹筋を300回、
連続でやったとほざいたナ。
っと、ここで、滝田君が、声をあげる。
滝田君とは、毎日300回腹筋運動をやっている猛者だ。
『連続って、連続?』
リチャードが応える。
「連続!」
その途端、滝田君と私の声が、同調して響く。
『ねえねえ、やってて飽きな~い・・300回?』