そこは山の頂上だった。
眺めがよく、富士山も見えると、自慢している山だった。
山頂での景色を期待して、
双眼鏡を持っていく事にした。
双眼鏡はケースに入っており、ズシリと重い。
景色を眺めるために持ってゆくには、贅沢品だ。
なんせ、山登りは、
1グラムでもリュックを軽くしようと努力しているからだ。
私の山登りでも、滅多に共にすることのないグッズだ。
それを敢えて、リュックに忍ばせた。
それほど、今回の山からの眺めにかけていた。
イヤッホォ~!
確かに頂上からの眺めは、素晴らしかった。
≪岩殿山≫ いわどのやま
山梨県の大月駅から眺めると、
裏手に、ド~ンと岸壁がそびえている。
頂上からは、眼下の大月の街並みや、
遠くの富士山が見事に眺められる。
(おおそうだそうだ!双眼鏡!)
リュックの底から引っ張り出す。
ハードケースのチャックを引っ張り、開けた!
その途端、目が裏返った。
出てきたのは、冬山で使うコレだ。
≪アイゼン≫
先日のウォーターマジックの話といい、
私には、ウッカリが多い。
年をとって、ウッカリが増えたのではなく、
若い頃から多い。
自分で自分にガッカリする。
誰も言ってくれないので、自分で言葉を吐く。
「こんな子に育てた覚えはない!」
アイゼン