
御嶽山遠望
私は、火山に登るのが好きだ。
日々蒸気を上げる九州の山々を見ながら育った。
噴煙を見ながら登るのが登山だった。
阿蘇山の火口を覗く為に、大分市から120キロ歩いていった。
九重山の硫黄の匂いを嗅ぐ為に、自転車をこいで行った。
「近寄るな!」
硫黄臭の近くでは、大人の人に注意され続けた。
日本最初の国定公園に指定された、鹿児島県の
<霧島火山群>から、九州を縦に、阿蘇山まで、
歩いたのは、火山好きだからこそだ。
火山の魅力は、その姿だ。
火山はむき出しである。
裸だ。
頂上をはじめ、大部分に木が生えていない。
草原と砂が山全体を包んでいる。
荒々しいハズの火山なのだが、女性的な山容をしている。
直線や角の多い日本アルプスなどの岩塊系の山岳と違い、
柔らかな曲線に満ちている。
ゆえに、まさかそんな山が突然、爆裂するとは考えない。
火山に登る登山者は、油断しているワケではないのだ。
あまりにも低い爆裂の確率に、怯えたくないのだ。
あのあたたかさ、
あの美しさ、
あの大きさに、
何もかも忘れて包まれたいと願うがゆえに、
怯えたくない気持ちが、火山へと向かわせるのだ。
つまり・・・
地震、雷、火事オヤジと同列の、火山噴火を、
忘れて登りたいのだ。
私は、木曽の御嶽山に登った事がない。
いつか登ろうと、取っておいた山と言える。
晴れた日、近隣の山の頂上に立つと、必ずその姿を眺めた。
「今度ね」
今年も、3回ほどつぶやいた。
ごめいふくを・・・

空から御嶽山