「滝田君、スキー用具を一式買いたいんだ、同伴してくれる?」
スキーに関しては、私の師匠である滝田くんに、すべてを委ねる。
委ねられた滝田くんと共に、
東京は神田に林立する、スキー用品店の扉をくぐる。
現れた店員に、滝田くんごと、すべてを預ける。
「全部下さい」
全部とは、スキーに関する道具、すべてだ。
まず、スキー靴の選定から始める。
「ああだ、こうだ」
説明を受ける。
ふむふむ・・いちいちうなずく。
足の型を取り、熱処理をし、私だけのスキー靴を作り出す。
その世界を知らないという事は、強みでもある。
全く知らないと、素朴な疑問が、湧いてくる。
「ビンディングって何ですか?」
「ワックスって何ですか?」
「厚手の靴下、履かないんですか~?」
いちいち驚く。
挙句に、基本用語に舞い戻る。
「え~?
スキー靴じゃなくて、
スキーブーツって言うんだ!」
言われた店員が、恥ずかしそうにつぶやく。
『どっちでもいいです』
「そうだ、棒も買わなくては」
『それは、ストックって言うの』
「知ってる、わざと間違った」
『なんで?』
「早く、おんもに行きたいと泣いている」
♪~ゆ~きよ来い、は~やく来い~♪