
よそんチにお邪魔すると、
時折、とんでもなく古いテレビに出くわしたりする。
古さの単位がうまく説明できないほど古い。
いわゆるブラウン管ってえ奴だ。
電源を入れても、あったまるまで、待たなければならない奴だ。
チャンネルは、手で持ってクルクル回すタイプ。
しかも、お決まりの如くそのクルク取っ手は壊れており、
部品すらない。
ゆえに、その昔は、その内部の金属を、
ペンチでつまんで廻したものだった。
最近の電化製品は、叩かれる事が少ない。
殆ど叩かない。
パソコンが不具合だからと云って、叩いたのでは、
壊れてしまう。
その点、昔のテレビは、よく叩かれた。
画面がいびつに映っているから・・とすぐに叩かれた。
カラーなのに、白黒に映ったりすると・・叩かれる。
ザーザーと画面に斜線が入り出すと・・叩かれる。
家の中にある電化製品で、叩かれる筆頭が、テレビだった。
テレビだけは、叩いても、親に叱られなかった。
「日本一頑丈なテレビ!」
そんなCMで、売り出すテレビが作られなかったのが、
不思議なくらいだ。
テレビの次に叩かれたのが、ラジオだ。
ラジオも、音がクリアでなくなると、叩かれる。
叩かれる回数はテレビほどではないが、
叩き方に容赦がなかった。
手が痛くなるほど叩いているオジサンもいた。
その挙句、何も音を発しなくなり、
「なんだ、こんなボロ!」
憤慨しているオジサンもいた。
そう考えてみると、
音を発する器械は、叩かれやすい器械とも言える。
器械に限らず、よく喋るヤツは、喋らない奴より、
叩かれていたような気もする。
私の場合、叩かれないかわりに、一言で片づけられた。
「ウルサイ!」
テレビだって、懸命に面白い情報を伝えているのに、
叩かれてばかりで、辛かったろうナ。
わかるよ・・その気持ち。

古いラジオ