
「大相撲を観たことがあるだろうか?」
ふと、頭に浮かんでしまった。
テレビでは、観てきた。
ずいぶん観続けたものだった。
しかし、生で観た覚えがない。
「それでいいのか!」
自分で自分を叱った私は、すぐにチケットを購入し、
両国国技館に向かった。
何事も、メディアの放送と現実ではギャップがある。
大相撲にも、それが当てはまった。
国技館は、大きかった。
客席数に驚かされた。
我らが芝居をする舞台は、300~1500席である。
最大でも、2500席がいいとこだ。
ところが、なんと、11000席あまりだと書かれている。
入口を入った所で、ぬいぐるみと写真撮影をいている人がいる。
《琴欧州》(ことおうしゅう)ではないか!
パシャリ
会場は、すり鉢状にへこんでいる。
ピラミッドを逆さまにしたような形状だ。
私が、当日買った席は、二階席の後部。
5000円の席だ。
ごご2時の時点で、客席は二分咲き。
ん・・?
目の前の客席の通路を、
青い制服を着た巨漢の男が歩いている。
あ・・この方は・・?
《武蔵丸》ではないか。
警備中なのか、整備中なのか、何やら仕事中のようだ。
(ふ~ん、制服着て働いているんだ)
弁当を買いに、通路に出た。
すると・・向こうから大きな人が堂々と歩いてくる。
《千代の富士》
歴代の横綱に、二人も出会ってしまった。
さらに、よくよく目を凝らしていると、
通路を制服に身を包んだ大柄な人が歩いている。
アレは?アッチは?
引退した力士が、国技館で働いている。
ちなみに、ロボコップの高見盛は、今場所、
西の花道に立っている。
何の仕事をしているのかは定かでないのだが、立っている。
それだけで、花道に華ができた。
アカデミー賞を取った俳優が、劇場で働いているというのは、
聞いたことがない。
それにしても、武蔵丸がすぐ目の前を歩いているというのに、
誰も反応しない。
なぜか?
私のいる二階席の後部は、殆どが、外国人で占められている。
テレビに映る一階席と違って、こちらは、様々な国の人たちが、
ビール片手に、相撲を眺めている。
そして、ルールに喧々諤々の議論をしている。
《オシダシて勝った時は、どこのラインなのか?》
丸なのか?
その周りの四角なのか?
それとも、台地から落ちたら負けなのか?

琴欧州