
土俵を箒で掃いている方たちがいる。
取組後には、二人が小さな箒で掃いている。
土俵上を綺麗にする為と、足が俵を割った場合、
簡単に発見できるようにする為だ。
三役が出場となると、どっと履き人が追加される。
6人ほどいる。
呼び出しも参加している。
この時の、履き方が面白い。
土俵に大量に撒かれた塩を土と共に、掬い取るのである。
一回に、一升マスほどの塩土をのぞいてしまう。
そしてその後、仕上げの履き方にうつる。
コレは二人で行う。
やや長めの箒を二人が持ち、
正面を向いて並んで立ち、扇状に履き目を付けてゆく。
出来上がると、東と西に、対照的な扇の目がついている。
さらに、横綱の登場となると、違う箒が出てくる。
長い一本の箒だ。
仕上げは、一人の人物が、正面を向き、
後ろに下がりながら、大きく弧を描いてゆく。
メトロノームの振子の様に箒を動かし、大きな扇を描く。
最後に、違う人が、仕切り線の所に歩み寄り、
白い線を掃きだす。
そして、自分の足跡を消しながら、去ってゆく。
美しい、扇だ。
すると、掃き出しが終わるや否や、呼び出しが
今、掃き清められた土俵の扇を踏みしめ、
東に向かって、呼び声をあげる。
「ひがあ~しぃ~~」
この一連の動きは、非常に整然としている。
一人ひとりに無駄な動きがない。
よく鍛錬された様式美でもある。
テレビでは見ることができないコレらの動きに、
いちいち感心してしまう。
その間にも、力士専用座布団を運ぶ者、
それを途中で中継して受け取る者、
タオル、水を補給する者、
最後の弓取り式の弓を準備する者。
その間も、高見盛は西の花道で立ったままである。
高見盛は、存在するだけで、高見盛なのであった。

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