
「さあ~滑るゾォ~!」
スキー場に着くや、慌てている。
初心者の私は、かなり慌てている。
帽子だの、ゴーグルだの、マスクだの、だのだのだの~
だのだの・・をウエアのポケットから取り出し、
身体に装着する。
いっときでも早くスキーをしたくて慌てている。
グイィィ~~~ン
ます、頂上に向かうゴンドラに乗った。
美しい山並みが、どんどん眼下に過ぎてゆく。
標高差600mが、アッと言う間だ。
そんな時だった。
「アレッ帽子が無い!」
どこかで、緑色の毛糸の帽子を落としたらしい。
帽子なしでは、あまりにも頭が寒い。
どうする?
ポケットを探ると、タオルが出てきた。
そいつを、頭に巻き付ける。
ペンキ屋の友人ケンジが頭に巻いているタオルと同じだ。
ガテン系と呼んでいい。
ウエアファッションが、突出しているスキー界だ。
男も女も、ウエアをきめている。
子供も高齢者も、決めきっている。
着ているスキーウエアに、抜かりはない!
帽子もしかりだ。
間違っても、タオルを頭に巻き付けているヤツなどいない。
パッと見、2000人いたゲレンデに、タオル頭はいなかった。
っというより、今までのゲレンデでも見たことがなかった。
初心者の私に、恥ずかしいという文字はない。
一日中、ガテン系で走り回った。
その帰りだ。
来た時と同じ道を帰った。
すると・・そこに、私の緑の帽子が、
誰かに拾われて、ポールにささっていたのだ。
思いがけない嬉しさに、小躍りしながら、つぶやいた。
《
スキー場では、落し物は、落とした所にある》