子供の頃のクリスマス
おやじが楽器を弾く人だった。
明大マンドリンクラブで弦楽器を弾いていた。
その為か、おかげか、クリスマスイブは、
家族演奏会になる。
バイオリンにギター、オルガン、
5人家族が、それぞれの楽器を持つ。
『ジングルベル』 『きよしこの夜』
わたくしの楽器は、いろいろ。
カスタネット、トライアングル、タンバリン
早い話が、
みそっかすだ。
弾けない人でも、弾ける楽器だ。
最後は、オヤジの『チゴイネルワイゼン』で終わる。
バイオリンの曲の中でも、究極に難しい曲だ。
体をくねらせ弾きながら、
難しい箇所にさしかかると、
口で、メロディを歌い、
難所を過ぎると、再び弾きだす。
食卓には、おふくろが作ったケーキが置いてあった。
上部のクリームに字が書いてある。
1961
声に出して、読もうとした。
すると、向かいに座っていた妹が、大きな声で。
「せん、きゅうひゃく、ろくじゅう、いち」
・・なるほど、どちらから見ても、
1961
なかなか
シャレたおふくろだ。
このシャレを使える年は、僕らが生きているうちはこない。
1961年のクリスマス
いまから、44年前のことである。